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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme

Aozora Bunko

征野に立った息子の後を、ひとり留守している老いたる母にちがいなかった。

「いかにお淋しいことであったろう。また、ご不自由なことであったろう」

家にはいらぬうちに、玄徳はもう瞼を涙でいっぱいにしていた。思えば幾年の間、転戦また転戦、故郷の母に衣食の費を送るいとまさえなかった。便りすら幾度か数えるほどしかしていなかった。

――すみません。

彼はまず故園の荒れたる門に心から詫びて、そして機の音の聞える裏のほうへ馳けこんで行った。

ああそこに、黙然と、蓆を織っている白髪の人。――玄徳は見るなり後ろから馳け寄って、母の足もとへ、

「母上っ」

ひざまずいた。

「――母上。わたくしです。今帰って参りました」

「……?」

老母は、驚いた顔して、機の手を休めた。そして、玄徳のすがたをじっと見て、

「……阿備か」

と、いった。

「長い間、お便りもろくにせず、定めし何かとご不自由でございましたろう。陣中心にまかせず、転戦からまた転戦と、戦に暮れておりましたために」

子の言葉をさえぎるように、

「阿備。……そしておまえはいったい、なにしに帰ってきたのですか」

「はい」

玄徳は地に面を伏せて、