Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
そして心に懼れた。
この人も、天下の苦しみを救わんとする者ではない。真に世を憂えるのでもない。――天下を奪わんとする野望の士であった。
「……過った」
陳宮も、ここに至って、ひそかに悔いを噛まずにいられなかった。
男子の生涯を賭して、道づれとなったことを、早計だったと思い知った。
けれど。
すでにその道は踏み出してしまったのである。官を捨て、妻子を捨てて共に荊棘の道を覚悟の上で来てしまったのだ。
「悔いも及ばず……」と、彼は心を取りなおした。
夜がふけると、月が出た。深夜の月明りをたよりに、十里も走った。
そして、何処か知らぬ、古廟の荒れた門前で、駒を降りてひと休みした。
「陳宮」
「はい」
「君もひと寝入りせんか。夜明けまでには間がある。寝ておかないと、あしたの道にまた、疲労するからな」
「寝みましょう。けれど大事な馬を盗まれるといけませんから、どこか人目につかぬ木蔭につないで来ます」
「ムム。そうか。……ああしかし惜しいことをしたなあ」
「何ですか」
「呂伯奢を殺して戻ったくせにしてさ、おれとしたことが、彼がたずさえていた美酒と果実を奪ってくるのを、すっかり忘れていたよ。