Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
貂蝉は、あたりへ聞えるばかり嗚咽して、彼の胸に、とめどなく悶えて泣いていたが、突然、
「呂布さま。どうか貂蝉の心根だけは、不愍なものと、忘れないでいてください」
と、叫びざま、曲欄へ走り寄って、蓮の池へ身を投げようとした。
呂布は、びっくりして、
「何をする」と、抱き止めた。
その手を、怖ろしい力で、貂蝉は振りのけようと争いながら、
「いえ、いえ、死なせて下さい。生きていても、あなたとこの世のご縁はないし、ただ心は日ごと苦しみ、身は不仁な太師の贄になって、夜々、虐まれるばかりです。せめて、後世の契りを楽しみに、冥世へ行って待っております」
「愚かなことを。来世を願うよりも今生に楽しもう。貂蝉、今にきっと、そなたの心に添うようにするから、死ぬなどと、短気なことは考えぬがいい」
「えっ……ほんとですか。今のおことばは、将軍の真実ですか」
「想う女を、今生において、妻ともなし得ないで、豈、世の英雄と呼ばれる資格があろうか」
「もし、呂布さま。それがほんとなら、どうか貂蝉の今の身を救うて下さいませ。一日も一年ほど長い気がいたします」
「時節を待て。それも長いこととはいわぬ――また、今日は老賊に従って、参殿の供につき、わずかな隙をうかがってここへ来たのだから、もし老賊が退出してくるとたちまち露顕してしまう。