Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
三
すると偉丈夫は、いきなり劉備の肩を打って、「好漢。それはもう聞いておるじゃないか。この方の名だって、よくご承知のはずだが」といった。
三
「えっ? ……私も以前からご存じの方ですって」
「お忘れかな。ははは」
偉丈夫は、肩をゆすぶって、腮の黒い髯をしごいた。
「――無理もない。頬の刀傷で、容貌も少し変った。それにここ三、四年はつぶさに浪人の辛酸をなめたからなあ。貴公とお目にかかった頃には、まだこの黒髯もたくわえてなかった時じゃ」
そういわれても、劉備はまだ思い出せなかったが、ふと、偉丈夫の腰に佩いている剣を見て、思わずあっと口をすべらせた。
「おお、恩人! 思い出しました。あなたは数年前、私が黄河から県のほうへ帰ってくる途中、黄匪に囲まれてすでに危うかった所を助けてくれた鴻家の浪士、張飛翼徳と仰っしゃったお方ではありませんか」
「そうだ」
張飛はいきなり腕をのばして、劉備の手を握りしめた。その手は鉄のようで、劉備の掌を握ってなお、五指が余っていた。
「よく覚えていて下された。いかにもその折の張飛でござる。かくの如く、髯をたくわえ、容貌を変えているのも、以来、志を得ずに、世の裏に潜んでおるがためです。