Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
五
「可惜、治国愛民の宝剣も、いかにせん持つ人もなき末世とあってはぜひもない。霊あらば剣も恕せ。猪肉売りの浪人の腰にあるよりは、むしろ池中に葬って――」
あなや、剣は、虹橋の下に投げ捨てられようとした。劉備は驚いて、走り寄るなり彼の腕を支え、「豪傑待ち給え」と、叫んだ。
五
張飛はもとより折角の名剣を泥池に捨ててしまうのは本意ではないから、止められたのを幸いに、
「何か?」と、わざと身を退いて、劉備の言を待つもののように見まもった。
「まず、お待ちなさい」
劉備は言葉しずかに、張飛の悲壮な顔いろをなだめて、
「真の勇者は慷慨せずといいます。また、大事は蟻の穴より漏るというたとえもある。ゆるゆるはなすとしましょう。しかし、足下が偽ものでないことはよく認めました。偉丈夫の心事を一時でも疑った罪はゆるして下さい」
「おっ。……では」
「風にも耳、水にも眼、大事は路傍では語れません。けれど自分は何をつつもう、漢の中山靖王劉勝の後胤で、景帝の玄孫にあたるものです。……なにをか好んで、沓を作り蓆を織って、黄荒の末季を心なしに見ておりましょうや」と、声は小さく語韻はささやく如くであったが、凛たるものをうちに潜めていい、そしてにこと笑ってみせた。