Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(一) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 309.839 Zeichen · 622 Bildschirme
張飛は、床を、大きく沓で踏み鳴らして、男泣きに、声をあげて泣いた。
「口惜しい」
彼は、坐りこんで、まだ泣いていた。この忍耐をしなければ、世のために戦えないのか、義を唱えても、遂になすことはできないのかと考えると悲しくなってくるのだった。
「さ。外へ出よう」
赤ン坊をあやすように、玄徳と関羽の二人して、彼を、左右から抱き起こした。
そして、その夜、「こんな所に長居していると、いつまた、張飛が虫を起さないとも限らないから」と、董卓の陣を去って、手兵五百と共に、月下の曠野を、蕭々と、風を負って歩いた。
わびしき雑軍。
そして官職のない将僚。
一軍の漂泊は、こうして再び続いた。夜ごとに、月は白く小さく、曠野は果てなくまた露が深かった。
渡り鳥が、大陸をゆく。
もう秋なのだ。
いちどは郷里の※(「さんずい+(冢-冖)」、第3水準1-86-80)県へ帰ろうとしたが、それも残念でならないし、あまりに無意義――という関羽の意見に、張飛も、将来は何事も我慢しようと同意したので、玄徳を先頭にしたこの渡り鳥にも似た一軍は、また、以前の潁川地方にある黄匪討伐軍本部――朱雋の陣地へと志して行ったのであった。