轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
わしは藩主でも何でもない。まだ事件の目鼻もつかぬまに。……去れ、去れ。はやく行ってさしずをせい」
「はっ。……さし当っての処置はすべていたして参りました。惣左どのの遺骸は、検視のうえ、瑞龍山の本堂へ運びおき、下手人の捜査には、大高新右衛門が主となって急速に手わけをいたしました」
「下手人どもは捕まりそうか」
「さ、それが……おそらく至難ではないかと思われまする」
奉行の口からなどいえないはずの弱音である。しかも割腹して責任をとろうとまで思いつめている彼として。
が、老公は、
「……だめか」
と、うめいて瞑目したきりであった。覚之丞のことばを是認しているとも受けとれる。問題は事件の表面だけのものではないらしい。
地にひれ伏している覚之丞と、明滅しきりな燈火の一室に沈思している老公とのあいだに、どこやら遠く、谺をよびあって、不敵なしれ者の行方をさがしまわっている捕手たちの声が聞えてでも来るように――夜かぜが廂にさわいでいた。
覚之丞はまた、そっと、面をあげて、
「口にこそ出しませぬが、平常に。……十分、警めておりましたが、こよいは大勢のお集まり、それに、よもやこんなことに及ぼうとは、ゆめ、思いも依らずおりましたため」