轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

二

二

「ああ、かれらは、無自覚のうちに、禊しているのだ……」

介三郎は、凝然と、しばし見ていた。

ふたりはやがて川の中から上がって来る。もう寒そうでもなかった。体を拭き、衣服を着直すと、目もくれず、楠公碑の前へ行って並んで坐った。

そして、川の中から介三郎へいったことばを、また繰返して、

「無智不遜なるきょうまでの無礼は、何とぞおゆるしくだされい」

生けるひとへでもいうように、幾たびも罪を謝していた。

すると、そのふたりに倣って、誰彼なくみな碑前にあつまり、凍てた大地に膝を折って、

「何とぞおゆるしを」

と、一せいに伏し拝んだ。

ある者は、

「きょうまでの懶惰を」

といい、ある者は、

「あしたから、たましいを入れ代えます」

と誓い、またある者は、

「ご照覧ください」

と、いった。

介三郎も皆のうしろに坐っていた。屹然と、闇の空に立っている無言の碑と、それに額ずく一同の影をながめていたが、夜目のせいか、涙をたたえていたせいか、ふと、彼の眼には、碑面の文字がこう見えた。

嗚呼忠臣億民之霊

ひとり楠公父子ばかりか、楠公父子の持っている性情は、この国の民ならいかなるやくざ者であろうと文盲の土民であろうとみな持っている。