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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

十七

と、たずねた。

綱吉がいつまで、答えずにいると、

「将軍職なるものは、そも、どなたからお授けをうけたものか。天下は一箇将軍家のものでないこと、その一事を顧るもあきらかでしょう」

と、釘を打ちこむような語気をもって、最後に、なお、

「ひが目の輩が、光圀の志を誤り、光圀に叛心ありなどといい触るるもあるやに聞き及んでおるが、たといそれを真なりとするも、天下は無窮の天下であって、なんで、光圀ごとき下賤のままになりましょうや。――もし仮に、光圀をして強いて行わしむるなれば、ご返上申すところへご返上申しあげるまででございましょう」

と、臆面なく述べた。

十七

衷心のものを吐いて、いうべきこともみないい終ると、光圀は座を退って、あらためて将軍家を拝し、

「それもこれも、邦家を思う余りに出たことばと、田爺の無礼をおゆるしあそばされい。この国あっての将軍家、百姓あっての宗家、ゆめ、順逆を誤りたまうな。年老るほど、苦労性になるものでござる。ご機嫌を損ぜられぬように」

と、綱吉の気色をなだめ、程なく暇を告げて退出した。

別間のほうに饗応のしたくをして待っていた将軍家の側近たちが、追いすがるようにして、せっかくの賜餐をすすめると、光圀はいんぎんに恩を謝して、