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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
二
悦之進、見てこい」
老公も、もう三、四献は、白髯のあたりへ杯を通わせ出した頃であった。
二
悦之進はすぐ、ふたりを呼びに立って行った。それにしては、遅すぎると、人々がやや怪訝を抱きかけていた頃――また酒興もいよいよ半酣という頃、
「見あたりません!」
と、悦之進がもどって来て、老公以下、一同へ告げた。
「夕方までは、たしかに二人とも見えたと申しますが、どこを捜してもおりませぬ。新しい草鞋をつけて、ご門そとへ大股に出て行くのを見かけたと、お台所でいう者もおりまする。いずれにせよ、無断で、こよいの事を前に立ち去るはいぶかしい限りと、拙者もご門から十町ばかり出てみましたが、とんと知れないので、空しく帰って来ると、ご門の畔りに、異なものを見かけました」
「異なもの?」
「はい」
みな杯をおいて、悦之進のほうを見た。老公の眼底にすら何か予感を怖れるかのような光がみえた。
「山荘のご門へむかって、左側の畑にあるいちばん巨きい老梅の幹がです。その幹が、夜目にも白くさくりと見事に削がれております。はてなと、近づいてみますと、あざやかな斬りぐちに、
天こうせんを空しゅう
するなかれ、はんれい