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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

五

町内の若い者の懸声といっしょに、獅子頭がおどりこんで来たのである。彼女はびッくりして、きゃっと、部屋の隅に小さくなっている。

五

祭の宵となった。軒ならび祭提灯の灯がそよぐ。

魚松のおかみさんは、約束の物を岡持に入れて、ふたたび路地の侘住居を訪れた。けれど、又四郎もお次もいなかった。

「どうしたんだろう?」

明りもついていない家の中を覗いてつぶやいていると、隣りの女房が汗もだらけな児を抱えて、門口から門口へいった。

「今しがた、ふたりで、他人みたいな顔して、出かけて行ったよ。他人みたいな顔してさ。ホホホ」

「まあ、そうですか」

おかみさんも、一緒に笑った。この界隈は気楽な世間だった。ありがちな事としているのである。

――どっちからいい出したともなく、宵にふと、ここを出た男女は、祭の賑わいをわざと避けて、大川の岸をあるいていた。

又四郎が先だった。

お次は五歩も十歩もあとから、黙って、かれの影を慕ってゆく。

「…………」

かれが立ちどまれば、お次も立ちどまった。もちろん又四郎は知っている。けれど強いて誘い出したのでもない。また強いて従いて来たわけでもない。

「……殺されたろう。