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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

三

もはやいずれも駈けつけておるかもしれぬが、念のために」

といいつけた。

入れかわりに、息せきながら二、三の者は、もう報告に帰って来た。

「惣左どのは助からん」

と、その人々は、悲調をおびた声でさけび、なお、

「蕗どのも、雪乃どのも、駕ぐるみ、影もかたちもない。――諸方、手分けしてさがしておるが」

と、絶望に近い声を放ち、ふたたび身支度を直してすぐ出て行った。

あわただしい出入りがつづいた。その中へやがて、悄然と影を見せたのは、郡奉行の鷲尾覚之丞だった。

管下の治安にあたっている責任者として、覚之丞は、自決の決意を眉にたたえていた。――庭上から老公のすがたを遠く拝して、

「申しわけもございませぬ」

と、額を地につけた。

三

「郡奉行か。……鷲尾覚之丞は少将どのの郡奉行ではないか。なにしに見えたぞ」

庭を見やりながら、老公は、叱るようにいった。

「……はっ」

職責を感じるの余り、覚之丞はなかば喪心の体であった。ただ割腹して、こよいの責めを負おうという決意のみが、ややもすれば先だって、思うように口がきけなかった。

「ここへ詫言などとは、なにを血迷うているか。そちは藩公の役人ではないか。