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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
十五
「これだ。――一味の連判はこれにちがいない。ご一同、念のため披見してごらんなさい」
又四郎からそれを渡された。人々は、佐々介三郎の披く手へ、ことごとく顔をよせ集めた。
果たして、陰謀組の一味、在府国許の士をあわせて、総計三百余名の氏名は、藤井紋太夫、藤田将監以下、その筆蹟と血判をつらねて繰れども繰れども、驚くばかり秘巻の奥からあらわれて来た。
「……ああ、彼も」
「あの者も」
むしろ意外な名が多い。人々は一瞬、窒息したように、ただ面と面をつき合せていた。
十五
「よそう」
介三郎は、途中でふいに、連判の巻を、くるくると巻き納めていった。
「まだ、老公のお手もとにも出さぬうちに、つぶさに披見するも如何。また、その必要もない。――ただこれが連判状なることゆえ、確かめて参ればよいのではあるまいか」
「もっともだ」
と、人々みな、異存はない。
「さらば、引揚げろ」
とばかり、さきに手文庫やその他から捜索した往来の書簡反古などと共に、介三郎が確固と護持して、どやどやと、踏みあらした玄関から門のほうへ歩み出したが、ふと、
「又四郎は、どうしたか。――又四郎がまだ残っているらしいが?」