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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
大義大慈悲
一
大義大慈悲
一
小屋の中に枕をならべている怪我人たちが、寒くないように、また、雨でも降って来たときにも凍えぬように、介三郎は職人たちを督して、翌日も翌々日も、まるでその事につぶしてしまった。
そればかりではない。
朝夕には、粥を煮たり、薬の世話から、それぞれの尿の面倒まで見てやらなければならないのである。
ともに、むしろを被って、小屋の隣に寝ているので、夜半といえども、傷口の痛みを訴えるものがあれば起きて薬をぬりかえてやるという始末。ほとんど、毎日の看護に、職人たちも、ろくに仕事はできなかった。
「旦那、どうするんです」
石権は案じていう。
「もう年内の日も幾日もありませんぜ。このぶんじゃあ、とてもお石碑のまわりまできれいに仕事は終りませんが」
「どうも……ぜひもない」
「正月を越したくねえもんです。何とかして」
「不測の天災と思うてあきらめるのだな」
「旦那がそうお覚悟ならばようございますが……だが、あんな犬畜生みてえなのを、いくら親切にしてやったところで、癒ればまた、世間へ出てろくなことはしませんぜ。へたアすれやあ、癒してもらった手で、また旦那へ闇討ちでもするぐらいが関のやまだろう」