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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

いよいよみな黙りこくッて仕事に向っていると、また、

「耳がないのか。どいつも、こいつも」

為吉が、ついにいきなり、

「なんだっ」

と、腰をあげて、三人を睨めかえした。

へらへらと、ひとりの浪人者が笑い出した。そして馴々しく、為のそばへ寄って、

「やあ、いつかの大将だな、そういつまで眼にかど立てているな。よく水汲みしておる、勘太というか、あいつもあれ以来は、すっかり俺におとなしくなってしまった。武士にたてを突くなど、損得を知らぬ骨頂というものだぞ」

「ここは仕事場だ、あっちへ行ってくれ」

「わかったか。ははは」

「あっちへ行ってくれ」

「いや、きょうは俺のほうから用事があるのだ。そこの小屋が空いたようだから、三日ばかり貸してもらいたい。ついでに、貴さまたちも、三日ばかり仕事を休め」

「じょうだんいっちゃ困る。年内にやりあげるので、あとの日数も足らないところだ」

「だれが、じょうだんを申したか、まッこのとおり、俺はほん気でいってるのだ。俺のほうでも年の暮どうしてもここが要用なのだ」

「要用だって、ひとの仕事場へ来て、仕事を休めの、小屋を空けろのと、そんなばかなはなしがあるもんか」