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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

嫌というのか」

「すると……ばくちですな」

「いかにも」

「賭博は国法で天下に禁じてあるはずですが」

「知れきったことを」

「それを白日の下で、しかも往還に近い街道すじでやれるのでござるか」

「やれるから、やるのだ」

「役人が参りませぬかな」

「役人。……役人などはおれたちの飲み友達だ。それに今年が初めてじゃなし、ちゃんと、渡りがついておる」

「……ふふむ」

介三郎は感服のていを示して、敢て、それ以上はいうことを好まぬように、

「では。おやりなさい」

「いいな。むむ」

と、顧み合って、

「あの空小屋も借りるぞ。また蓆掛けを足すから、この辺にも、ずっと、露店の物売りが並ぶだろう。まあ三日間は、仕事のほうは、休んでくれい」

「工事は休めぬ。職人どもの仕事はこれにて続けておるから、そちらは、こっちにかけかまいなく」

「でも、雑沓するぞ」

「まさか、墳墓の地域にまで、混雑はして来ますまい」

「小屋のまわりと、通り道だけだが」

「しからば、ご随意に」

「はなしは、まとまった。……おういっ、親分」

手をあげて、彼方をさしまねくと、花隈の熊と、生田の万は、まるで亀石みたいな大きな顔を持ってのそりと歩いて来た。