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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

「罰あたりめが。大雨にでもなればいい……」

と、職人たちや、為などは、帰り途でつぶやいたが、親方の石権が、

「ばかをいえ、大雨になんぞなられたら、こっちも困る」

といったので、その日初めて、みんなして笑った。

あくる朝、来てみると、仕事場の附近は、まるで景色がちがっている。馬市でも立つように、畑道や草原のなかに、煮売屋が出ているし、さまざまな露店商人が荷をひろげている。

「三日の辛抱だ。たのむぞ」

介三郎は、みなへいい渡した。

「だいじょうぶです」

一斉に答えた。我慢というものは、こうなると、自分の意地にたいしてすることになるらしい。

午ごろから、ぼつぼつ客が寄って来た。その人間がどれもこれも、無為徒食をその風体にあらわしていた。こんなに遊んでいる人間がみなどうして百姓以上に衣食できるのかふしぎな事だった。いや、それも人目を憚ったり世間をおそれてならまだしも、長い刀を横たえていたり、肩をいからして、子分や女を連れあるいたり、畑に働いている者をつかまえて、やたらに土百姓呼ばわりをしてみたり、ばくちに倦みはてたあげくは、自棄になって、飲んだり食ったりへどを吐いたり――日も暮がたに近づくと、いやはや言語道断な狼藉であった。