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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

「まあ、そう悪くいうな。……かあいそうに、枕をならべて聞いている」

「自業自得というもんでさ」

どうせ間に合わないものと、投げ出したか、石権もこの数日は、焚火にばかりあたって仕事に手を出さなかった。どう焦心っても、年暮の日はあと五、六日しかなくなっていた。

けれど怪我人たちは、この十日ぢかくで、あらまし皆、元気を恢復していた。

ほとんど、完全にもとの体になった者も、幾人かいたが、まだ起きられないでいる者を捨ててゆくのは、さすがに彼等もしのびないところと見えて、癒った者は、まだ横たわっている者の看護をしていた。

「あれをみろ。やはりかれらとて、犬畜生ではない」

焚火のうえに、木の股を組み、それに懸けた雑炊の大鍋をまえにしながら、その夕べ、介三郎は石権や職人たちへそういった。

だが、かれほどな歓びを、面にあらわした者はなく、為などは、

「当りまえだ」

と、聞えよがしにいった。

その声を、打消すように、

「おい、みんな」

介三郎は、小屋の人々を、振りかえって、

「どうだ、小屋の中よりは、火のそばで、みんなかたまり合ったほうが、暖かそうだぞ。起きられる者は、これへ出て来てわしらと一しょに雑炊を喰わないか」