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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

二

すると、半分は出て来て、

「じゃあ、すみませんが、あたらせていただきましょう」

と、職人たちのあいだへ、小さくなって割りこんだ。

その中には、浪人者の牟礼もいた。浮田もいた。

けれど、赤々と燃える火に、顔をあげているのが辛そうに、膝をかかえて、俯向いている。

ひとを見れば脅すもののように持っていたあの獰猛な眼も、いまはひとを憚り世をおそれるためにある眼みたいであった。

「ご浪人。ご両所」

「はっ……」

「雑炊が煮えたらしい。さきにあなた方から箸をつけておやんなさい。拙者もいただこう。さ、茶碗をお出しなさい」

「いや、自分で盛ります。どうもおそれ入ります。これは恐縮千万で」

まるで人がちがったように、ふたりは肩をせばめて、茶碗をうければその茶碗を押しいただいた。

二

焚火の焔を、大きく囲んで、みな一個ずつの碗と箸をもち、しばらくは、熱い雑炊をすすりあうほか声もしない。

そのうちに、小屋のうちから、またひとりのそっと来て、介三郎にささやいた。

「旦那、わしらの飲みのこした酒が小屋にありますが、おあがりになりませんか」

「おう、花隈の熊か。酒があると……それは好物、もらおうか」