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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
果たして。
介三郎たちが、湊川のながれに近づいて、崩れた堤の一端に駈けのぼったとき、河のまッただ中にあたって、ざんぶと、白いしぶきが見えた。
「あっ、身を投げたっ」
たれかがいった。
溺れ死ぬには十分な激流の深いところもある。介三郎も舌うちして、
「ええ、浅慮なことを。はやく下流へまわれ」
と、河原へとび降りた。
すると――
そこにはふたりの衣服が脱いであった。風に飛ばないように大小が乗せてある。ぬぎすてた草履も二そく、ぴたりと揃えてあるところは、取りみだれた者の始末ではない。
「……はてな?」
河面をすかして見た。
水のうえは明るかった。
介三郎はそこに意外なものを見出したのである。水面から顔だけ出しているふたつの影だった。溺れもせず躁ぎもしない。ただじっと、十二月末の寒流のなかに怺えている首と首だ。
眼のせいではないか。
岩の突角でも、そう見えるのではないか。
疑ったが、それを見たのは、彼だけではない。河原に立った者はのこらず怪しみの眼をこらして、同じところを見つめていた。
試みに、介三郎が、
「おううい。……牟礼どの、浮田どの、ご両所か、そこにおるのは」