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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

「まだ、お国許におる一味の者とやり取りした手紙が、たくさんになければならぬはずだが」

「用心ぶかい紋太夫のこと、そういう後日の証拠となるようなものは、ことごとく焼きすてておるのではあるまいか」

「土蔵を見たか」

「まだ見ない」

「よし、われわれは、土蔵へはいってみよう」

「だめだ。鍵のありかが知れない」

「用人が心得ているだろう」

「その用人が、頑強にてむかいして来るので、介三郎が、斬ってしまった」

「……ちと、早まったな」

すると、奥のほうで、

「悦之進、悦之進」

と、その介三郎の声がし、すこし間をおいてから、また、

「あったぞ、だいぶ」

と、狂喜しているのが聞えて来た。

みな、そこへ駈けて行った。ふた間、三間ほど、家捜しして、足の踏み場もないほど家財調度のちらかっている中に、一個の鎧櫃のふたを開けて、佐々介三郎と江橋林助のふたりで、古手紙の束や、書類を選りわけていた。

「おお、それがみな、一味の往復したものか」

「急場だ。つぶさに、選り分けてもおられぬが、だいぶそれらしい者の名が見あたる……」

「およそに、持って参ろう。仰せつけには、多分なものは要らぬ。ただ、かならず見つけて参れとご注意のあったのは、ただ一点」