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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

「ご門を出てから十町ばかり参ったところ――あの増井川の桃源橋へかかるてまえであったそうです。くせ者どもは、附近の松ばやしや藪の陰に潜んでいたらしく、駕の灯を見ると、何かあいずをして一度に襲いかかり、まず惣左どの一名を目がけて斬りつけ、仆れたと見てから、蕗どのの駕へ集まっていたそうです。……駕の者や百姓たちも、それしか見届けぬうち、お知らせに駈けて来たと申しまする」

「あいては何名ほどか」

「五、六人という者もあり、もっといたという者もあり、一致いたしませぬ」

「身なりは」

「それも、すこぶるあいまいで、浪人じゃと、ひとりがいえば、いや博徒らしかったという者もありで……」

「与平。そちは悦之進を伴って、提灯をたずさえ、篤と、附近の検分をいたして来い」

「悦之進どのには、聞くやいなや押っとり刀で駈けつけまして、これにはおりませぬが」

「不届きなやつ。いかような変が起ろうとて主人のゆるしも待たず駈けゆくなど、事にあたって進退のわきまえせぬ軽忽者。……よしよし、あとで叱りおこう。文八をつれてゆくがよい」

「承知いたしました」

かれが去ると、また、ふたりの家臣へ、

「郡奉行の鷲尾と、太田村の見廻り役、大高新右衛門の両家へ、変を知らせておけ。