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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

鬼哭

一

鬼哭

一

次の日となると。

花隈の熊の子分らしいのが、たくさんな竿竹だの筵だの、また蒲団だとか火鉢だとか、まるで引っ越し荷物ほど、何台かの車で運んで来て、

「なるほど、ここはお誂えむきだ」

と、建碑小屋をわが物顔に陣取ってしまった。そして、そこの横や裏手へ、さらに竹竿や細丸太でむしろ掛けを張り出し、

「こいつあいい」

と、その晩から、寝泊りするらしく、夕方には、七輪で煮ものしたり、酒など燗していた。

すぐそばの墓山では、碑を中心として、介三郎以下の者が、終日、ひっそりと仕事にいそしんでいた。

この敬虔な職人たちの手によってきれいになった霊地を、無用なあぶれ者の土足に踏み荒されるのは忍びないこととして、介三郎はあらかじめ、墳墓の丘のまわりに縄を張っておいた。

そして、その四方に、

用なき人、入るを許さず

と、板ぎれに書いて、制札のように立てさせておいた。

にわかに隣り合った野天ばくちの小屋の者は、見ても無関心だった。第一、ここに立った碑にたいしてすら何の関心もないらしい。ただあしたの天気や客集まりばかりを案じて時々、聞くにたえない戯れを大声で投げあっていた。