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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

「……天気はどうかなあ?」

それも案じられたひとつである。

何分、家中の家族ばかりでなく、九条家の諸太夫や、親戚の諸大名や、老中たちの二、三へも案内を出してあり、未曾有の雑鬧が予想されるので、

「もし降りでもしたら?」

と、万一の場合までを考慮して、手配は万全を期していた。

二十三日の朝は、幸いにも、好晴であった。しかも風さえなくて、あたたかな冬日が、邸内の樫林を透いて能楽堂あたりの幕囲いや芝生の茶屋などにこぼれ、きょうの催しを祝福しているかのようであった。

定刻に近づくと、さだめられた門から庭づたいに、拝観者の家族は一群一群、其処此処の庭を荒さぬように、秩序よく、またつつましく流れ入って来た。

子の大勢なものは大勢を従え、祖父母や両親のあるものは、祖父母両親にかしずき、きょう初めてご邸内を観るという新妻も、娘たちも、また縁類のものも、悉く今日はここに集まったかと思われるばかりだった。

同家中なので、その一組一組とのあいだに、日頃の疎遠のあいさつが交わされていたり、大きく成った子を賞めあったり、真に君臣一家族の和やかな景色がそこここに眺められた。

「……あ。