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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
――それにまた、こよいは遊ぼうという一夕、わしも遊ぶ、みなも肚のそこから遊べ。さあ、くつろげ」
なお、いくらか固くなって、如何はせんという顔いろがみなに見える。剣持与平と渡辺悦之進のふたりが、老公のそばから口添えした。
「おことばにあまえて、気ままになされい。老公はこうしておいでになるのがお勝手なのです」
すると、客のなかの年長者から、
「しからば、おゆるしを」
と、平たく坐り直す。
つづいて、次々に、
「では」
「では」
と、みな膝を楽にした。
そのまえに、膳が運ばれる。幾つか銚子が要所をみて置いて行かれる。
酌人の悦之進と与平が、
「亭主どのに代りまして」
と、座の中にすわり、銚子のつるを把って、そろそろ杯陣へむかいながら、
「こん夜は、申すまでもなく、汁講すなわち無礼講ですから、どうぞ十分に」
と、酌いでまわる。
「やりますぞ、大いに」
ひとりが、うけながら、ふといい出した。
「きょうこれへ参る途中、人見又四郎を誘いに寄りましたところ、きのうのうち、西山荘へお供して来ているとのことでしたが……あの棒殿はどうしましたか」
「そうじゃ、そういえば、棒も見えぬ。林助も見えぬ。