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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

初めはふたりの顔役が合同でやるはなしだったのを、あれから何かもつれ合って、花隈の熊のほうが、一手でやり出したものだから、生田の万の子分が荒らしにやって来たんだ」

「……ふふむ、そうかな」

「そうかなあって、てめえだって以前はああいう仲間とつきあったこともあるんだろう」

「あるから、浅ましさに、身ぶるいをしてるんだよ」

勘太のことばは、かれの心を正直にもらした唸きだった。

ところが、喧嘩の渦は、やがてこっちの縄内まで氾濫して来た。そこらの焚火も露店の火も、ばたばたと消えてしまい、野良犬の咬みあいみたいに、異様なさけびや、刃ものの光ばかりが闇に残されている。

血まみれになって、ひとり碑の丘へ逃げあがって来たのがある。おそろしい形相で、それを追いかけて来たのは、かねてから顔もよくわかっている花隈の用心棒の浮田甚兵衛と柴田一角という浪人者であった。

さっきからそこに立って、腕ぐみしたまま、黙然と見ていた佐々介三郎は、そのとき初めて、

「下司っ、退れっ」

と、かれらへ向って一喝を与えた。

甚兵衛も一角も、およそかれという者を甘く見ぬいてなめきっているので、ちょっと、気魄にはびっくりしたらしいが、すぐ恐ろしい顔つきを、見よがしに突きだして、