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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

お次であった。

(ぜひ娶れ。あれをもらえ)

これはその後、老公の命によるものである。

(棒に花が咲いた)

と、かれの友はからかったが、又四郎としては、そうてれてもいない。

お次の親たちが江戸から来て、いとも質素に、内祝言をすましたのは、晩春汁講のあった頃からまもない後のことだった。

けれど、棒は相かわらず棒を脱却していない。書斎を閉めれば、読むか、寝ているかである。書斎をひらけば、独座、鼻くそを掘りつつ、雲を見ているか、毛脛を撫でているかぐらいなものである。

ひとりぶつぶつ何か呟いていることがある。お次は一緒になってからよけいに、

(変なひと)

と、思っているらしいが、銀河の晩、大川端をさまよい歩いたあの当時から見ても、その愛は、決してそれ以下にはなっていなかった。

(空論の徒を嗤ったが、軽忽な実行家も嗤われて仕方がない。おれは後者のほうで、まず見事にしくじった。もっとも、しくじっても無意味ではなかった。実行は非常に早わかりがするからな。……だがこの轍を二度踏むとすれば、おれは馬鹿である)

棒のひとり語とは、大体こんなものであった。

(これからは、大いに学問もしてみよう。