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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

香のものの干大根を、老公はよい音をさせて噛む。歯はまだ壮者をしのぐらしい。胃欲もふつうである。

「棒はいかがいたしたか」

済むと、笑いながら、すがたの見えぬ又四郎の容子を訊く。

悦之進も笑って答えた。

「醜態をお眼にかけたから、自分で謹慎すると申して、一室のなかに入ったまま出てまいりませぬ」

「泣いたので、間がわるくなったのであろう」

「正言を吐いたのだから、ほかにご無礼はしていないが、つい涙をこぼしたのは、不覚だと嘆いておりました」

「呼んでこい、まいちど」

「参りますまい」

「わしの命じゃと申せ。あしたは西山荘に汁講がある。これより予の供をして来ぬかというてみい」

「はい」

悦之進は、立って行ったが、しばらくすると、それへ戻って、

「謹慎中だから参られぬといいおります」

「強情なやつ。わしから謹慎を命じたおぼえはないが、ゆるすと申せ。予に、機嫌をとらせおる」

ふたたび、奥とそこの間を、悦之進は往復して、

「――それなら、お供してまいると、やっと腰をあげました。強情者は徳です、わたくしにも、さんざん機嫌をとらせました」

と、伝えて、棒の性格についてあれこれと、おかしげに考証していると、老公が眼で、