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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
(あんなものは、問題にしておらぬ。版木を焼き捨ててしまうべきものだ。なぜならば、林道春の輩には、わが神国の真のすがたが観えていない。かれらの眼に実物以上、大きく観えているのは、幕府のみである。その眼で、国史を観る……堪ったものか)
(第一、いまの儒者中、将軍家をさして、国君と称したり、甚だしきは、大君などと書して、みだりに帝王に擬しておる輩がある。言語道断というほかない。……すべてそうした過誤と歪曲を、従来の史からのぞいて、正しきに正す、それが光圀の根本である。わかったか、お身方には)
(わかりましたが……)
と、辻了的は、はじめて口をひらくと、詰寄らんばかり光圀を凝視していった。
(あなた様には、そも、どなた様のお子でいらせられますか)
(知れたこと、頼房が子じゃ)
(その頼房様は)
(徳川家康公の十一子)
(さすれば、あなた様には、権現様のお孫にあたられ、いまの将軍家とも、ご縁の濃いお血すじではありませぬか)
(それが、どうしたのか)
(ご宗家にたいし奉りまして……)
(将軍家へどうじゃと)
(……ちと、如何かと)
(何が。どこが?)
(ご推察なさりませ)
(わからん。