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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

あとは引受けた。貴様はすこしも早く、あの橋を渡れっ」と、吠えた。

たちまち修羅と変るそこの血けむりを後にして、趙雲は、

「たのむ」

と一声、疲れた馬を励まし励まし、長坂橋を渡りこえて、玄徳のやすんでいる森陰までやっと駆けてきた。

「おうっ、これに――」

と、趙雲は、味方の人々を見ると、馬の背からどたっとすべり落ちて、その惨澹たる血みどろな姿を大地にべたと伏せたまま、まるで暴風のような大息を肩でついているばかりだった。

「オッ、趙雲ではないか。――して、そのふところに抱えているのは何か」

「阿斗公子です……」

「なに、わが子か」

「おゆるし下さい。……面目次第もありません」

「何を詫びるぞ。さては、阿斗は途中で息が絶えたか」

「いや……。公子のお身はおつつがありません。初めのほどは火のつくように泣き叫んでおられましたが、もう泣くお力もなくなったものとみえまする。……ただ残念なのは糜夫人のご最期です。身に深傷を負うて、お歩きもできないので、それがしの馬をおすすめ申しましたが、否とよ、和子を護ってたもれと、ひと声、仰せられながら、古井戸に身を投げてお果て遊ばしました」