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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

二

それから幾夜の後とも知れず、魏の曹操が水寨のほとりで独り釣糸を垂れている漁翁があった。

悠々千里の流れに漁りして、江岸に住んでいる漁夫や住民は、もう連年の戦争にも馴れていて、戦いのない日には、閑々として網を打ち、鈎を垂れているなど、決してめずらしい姿ではなかった。

――だがこのところ、ひどく神経の鋭くなっている曹軍の見張りは、あまりに漁翁が水寨に近づいて釣しているので、

「怪しい老ぼれ?」

と見たか、たちまち走舸を飛ばしてきて、有無をいわさず搦め捕り、そのまま陸へ引ッ立てて行った。

二

軍庁の一閣に、侍臣は燭をとぼし、曹操は寝房を出て、この深夜というに、ものものしく待ちかまえていた。

(呉の参謀官沢が、一漁翁に身をやつし、何ごとか曹丞相に謁して、直言申しあげたいとのこと――)と、耳おどろかす報らせが、たった今、曹操の夢を醒ましたのであった。

これに依ってみると、水寨の番兵に捕まった漁翁は、魏の陣中へ引かれてくるとすぐ、

(自分こそは、呉の参謀沢である)と、自ら名乗ったものとみえる。

――程なく。

曹操の面前には、みすぼらしい一竿翁が、部将たちに取り囲まれて引かれてきた。