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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

三

一漁村へかかった。

趙雲は駒をすてて、漁夫の一舟へ飛び乗り、

「あの船へ漕ぎ寄せろ」と、先に廻っていた。

呉の船は帆うなりをあげながら下ってきた。趙雲の小舟がそれへ近づこうとすると、船上の周善は、長い戈を持って、

「射殺せ、突き殺せ」

と、必死の下知に声をからした。

舷に並んだ呉の兵は、弓を引きしぼり、戟を伸ばして、小舟を寄せつけまいと防ぎながら、その船脚はなお颯々と大江の水を切って走ってゆく。

「やわか。通すべき」

趙雲は、槍をなげすてた。

腰なる青の剣は、たちまち雨と降る矢を切り払う。そして小舟のへさきが、敵船の横へ勢いよくぶつかった瞬間に、

「おおうッ。おのれ」

喚きながら、身をもって、舷へ飛びつき、無二無三、よじのぼって、ついに船中へ躍りこんで来た。

呉の兵は、彼の形相に怖れて、わっと逃げかくれる。趙雲はあたりを睥睨しながら、大股に船屋形の内へ入って、

「夫人っ、何処へおいでになるのですっ」

と、鏡のような眼をいからせて咎めた。

その声に、夫人のふところに眠っていた幼君の阿斗が泣きだした。侍女たちは怖れてみな片隅に打ち慄えている。しかし、さすがに夫人は気位が高い。