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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

四

そのことばが、まだ終らぬうちに、たちまち、金鼓喊声、四山にこだまし、あたりの樹林みな兵馬と化したかの如く、四方八面に敵のすがたが見えてきた。

中に、声あって、

「曹操、よくぞ来た。燕人張飛これに待ったり。そこを去るな」

あなやと思うまに、丈八の蛇矛、黒鹿毛の逸足、燦々たる甲が、流星のごとく此方へ飛んできた。

四

「張飛だっ」

名を聞いただけでも、諸将は胆を冷やした。士卒たちは皆、甲や下着を火に乾していたところなので、周章狼狽、赤裸のままで散乱するもある。

許のごときも、

「丞相の危機。近づけては」と、あわてて、鞍もない馬へ飛び乗り、猛然、駈け寄ってきた張飛の前に立って戦い、ややしばし、喰い止めていた。

その間に、

「すわこそ」と、張遼、徐晃など、からくも鎧を取って身にかぶり、曹操を先へ逃がしておいてから、馬を並べて、張飛へかかって行った。

とはいえ、張飛のふりまわす一丈八尺の蛇矛には、当るべくもない。その敵を討つというよりは、彼の猛烈な突進を、少しの間でも防ぎ支えているのがやっとであった。

曹操は、耳をふさぎ、眼をつぶって、数里の間は生ける心地もなくただ逃げ走った。