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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

黄忠の矢

一

何で妻子がないからといって、武人たるものが、憂愁を抱きましょう」

玄徳も孔明も、黙然とふかくうなずいたまま、後は多くもいわなかった。趙子龍こそ真に典型的な武人であると、後には人にも語ったことであったが、その時はわざと一片の恩賞をもって賞したに止まった。

黄忠の矢

一

このところ髀肉の嘆にたえないのは張飛であった。常に錦甲を身に飾って、玄徳や孔明のそばに立ち、お行儀のよい並び大名としているには適しない彼であった。

「趙雲すら桂陽城を奪って、すでに一功を立てたのに、先輩たるそれがしに、欠伸をさせておく法はありますまい」

と、変に孔明へからんで、次の武陵城攻略には、ぜひ自分を――と暗に望んだ。

「しかし、もしご辺に、不覚があった場合は」

孔明が、わざと危ぶむが如く、念を押すと、

「軍法にかけて、この首を、今後の見せしめに献じよう」

張飛は、憤然、誓紙を書いて示した。

「さらば行け」と、玄徳は彼に兵三千をさずけた。張飛は勇躍して、武陵へ馳せ向った。

「大漢の皇叔玄徳の名と仁義は、もうこの辺まで聞えています。また張飛は、天下の虎将。――その軍に向って抗戦は無意味でしょう」