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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

二

「えっ、荊州へ……。た、たれが報らせてきた、そのようなことを」

「孔明が早舟を飛ばして、自身、呉の境まで注進に来たのです。荊州の危機、今に迫る。国もとへ君を迎えて、一刻もはやく対策を講ぜねば、荊州の滅亡は避け難し――とあって」

「それは、一大事」

「さ。すぐお帰り下さい」

二

「ううむ。そうか……」とのみで、しばらく沈思していたが、やがて玄徳は、肚を決めたもののように面をあげ、趙雲へいった。

「よし。帰ろう」

「では、直ちに?」

「いや少し待て。妻にもこのことを諮るから」

「それはいけません。ご夫人に相談遊ばせば、お引きとめあるは必定です」

「そんなことはない。予にも考えがある」

玄徳は、奥へかくれた。

そして妻の室を訪うと、夫人は良人を迎えながらすぐ云った。

「どうしても今度は荊州へお帰りにならねばなりませんか?」

「えっ……。誰にそれを聞きましたか」

「ホホホ。あなたの妻ですのに、そのくらいなことが分らないでどうしましょう」

「はや承知なれば、多くもいわぬ。玄徳はすぐ帰国せねばならん。荊州は滅亡の危うきに瀕している。そなたの愛に溺れて、国を失うたとあっては、世の物笑い、末代までの廃れ者になろう」