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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

四

むしろ死すとも、不義の戦はすまじと哭いて云ったという。――楽毅伝のあの一章は少年の日、頭にふかくしみこんで今日になっても、この曹操はそれを忘れることができない。自分が四隣の乱をしずめ、府にあっては宰相の権をにぎり、出ては兵馬を司るのも、こうしなければ、四方の暴賊はみな私権を張り、人民はいつまで戦禍の苦しみから救われず、秩序は乱れるばかりで、遂には無政府状態におち入り、当然、漢朝の天下も亡びるに至ることを憂えたからにほかならない。――わが文武の諸将は、みなよく曹操の旨を諒せよ」

彼は、侍坐の重臣に、そう語り終ると、また数杯をかたむけて、面色大いに薫酔を発した。

「筆と硯をこれへ」

彼もまた、雲箋を展べて、即興の詩句を書いた。そしてそれへ、

吾レ高台ニ独歩シテ兮

俯シテ万里ノ山河ヲ観ル

という二句まで書きかけたところへ、たちまち、一騎の早打ちが、何事かこれへ報らせに飛んできた。

四

大宴満酔の折も折、席も席であったが、

「時務は怠れない」と、曹操は、早打ちの者を、すぐ階下によびよせて、

「何事やある?」と、許都からの報らせを訊いた。

「まず、相府の書を」と、使いは、官庁からのそれを曹操へ捧じてから、あとを口上で告げた。