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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

――お茶など献じましょうか」と、或る折、侍側の荀攸は、わざと彼の繁忙を妨げて云った。

「茶か。そうだな、一ぷく喫しようか」

「忙裏の小閑は命よりも尊し――とか。こういう時、一喫の茶は、生命をうるおします」

「ときに税務の処理は、片づいたか」

「税務よりは、もっと急がねばならないことがおありでしょう」

「何じゃ、そんなに急を要することとは」

「玄徳以下の者が、ここを逃げ去ってから、もう十日余りとなります。彼らがもし江陵の要害に籠り、そこの金銀兵糧などを手に入れたら如何なさいますか」

「あっ、そうだ!」

曹操は、突然、卓を打って突っ立ちながら、

「忙におわれ、些末に拘泥しておって、つい大局を見失っていた。荀攸! なぜ其方は、もっと早く予に注意しなかったのだ」

「――でも、当の敵を、お忘れある筈はないと思っていましたから」

「ばかをいえ。こういそがしくては、誰しも、つい忘れることだってある。早く軍馬の用意を命じ玄徳を追撃させい」

「ご命令さえ出れば、決してまだ手おくれではありません。玄徳は数万の窮民を連れているので、一日の行程わずか十里という歩み方です。鉄騎数千、疾風のごとく追わせれば、おそらく二日のうちに捕捉することができましょう」