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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

「嘘だろう?」と、疑ったほどであった。

それもその筈で、つい今し方、賓殿の上で、孔明の不遜に憤った主君は、彼を避けて、奥へかくれてしまったと、愉快そうに評判するのを聞いていたばかりのところである。

「間違いだろう、何かの」

がやがやいっている所へ、魯粛は意気ごみぬいて、触れて廻ってきた。やはり開戦だという。人々は急にひしめきあった。色をなして、開戦反対の同志をあつめた。

「孔明に出しぬかれた! いざ来い、打ち揃って、直ぐさま君をご諫止せねばならん」

張昭を先に立て、一同気色ばんで、孫権の前へ出た。――孫権も、来たな、という顔を示した。

「臣張昭、不遜至極ながら、直言お諫めしたい儀をもって、これへ伺いました」

「なんだ」

「おそれながら、君ご自身と、河北に亡んだ袁紹とを、ご比較遊ばしてみて下さい」

「…………」

「あの袁紹においてすら、あの河北の強大をもってすら、曹操には破られたではございませぬか。しかもその頃の曹操はまだ、今日のごとき大をなしていなかった時代です」

張昭の眼には涙が光っていた。

五

「伏して、ご賢慮を仰ぎまする。――ゆめ、孔明ごとき才物の弁に、大事を計られ、国家を誤り給わぬように」