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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

さても、油断のならぬことよ、心もおどおどして、もう空寝入りしているのも気が気ではない。

やがてのこと――密使の男と、ひとりの大将は、用談がすんだとみえて、跫音ひそかに立ち去った。周瑜もすぐ寝室へもどってきた。そして今度は、帳を引いて、寝床の中へ深々ともぐりこんだ。――夜明けの待ち遠しさ。蒋幹は薄目をあいて窓外ばかり気にしていた。いい按配に、周瑜は再び大きな寝息をかき始めている。そして、窓の辺りが、ほのかに明るくなりかけた。

「……うーむ。ああ、よく眠った」

蒋幹はわざと大きく伸びをしながらそう呟いてみた。周瑜は眼を覚まさない。しめたと、厠へ立つふりをして、内房から飛び出した。外はまだ暁闇、わずかに東天の空が紅い。

陣屋の轅門まで来ると、

「誰だっ?」

番兵に見咎められて、一喝を浴びた。蒋幹はぎょっとしたが、強いて横柄に構えながら、

「周都督の客にむかって、誰だとは何事だ。わしは都督の友人蒋幹じゃが」

と、肩を高くして振向いた。

番兵らはあわてて敬礼した。蒋幹は悠々と背を向けたが、番兵たちの眼から離れると、風の如く駈け出して、江岸の小舟へ飛び乗った。

曹操は彼の帰りを待ちかねていた。