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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

「何でかような大事を嘘いつわりにいえましょう」

「ああ! ……それを聞いて安堵いたした。貴公らの投降が、曹丞相の深遠な謀計の一役をもつものとは、夢にも知らなかった。思えばそれもこれも、ひとつの機運。魏いよいよ興り、呉ここに亡ぶ自然のめぐり合わせだろう」

もちろん、先頃から、甘寧と※(「門<敢」、第3水準1-93-58)沢が、人なき所でたびたび密談していたことは――周都督に対する反感に堪忍の緒を切って――いかにしたら呉の陣を脱走できるか、どうしたら周都督に仕返しできるか、またいッそのこと、不平の徒を狩り集めて、暴動を起さんかなどという不穏な相談ばかりしていたのであった。わざと、蔡兄弟に、怪しませるようにである。

蔡和、蔡仲の兄弟は、それが巧妙な謀計とは、露ほども気づかなかった。自分たちがすでに謀計中の主役的使命をおび、この敵地の中に活躍しているがために、かえって相手の謀計に乗せられているとは思いもつかなかった。

裏をもって謀れば、またその裏をもって謀る。兵法の幻妙はこの極まりない変通のうちにある。神変妙通のはたらきも眼光もないものが、下手に術をほどこすと、かえって、敵に絶好な謀計の機会を提供してしまう結果となる。