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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

やがてちりぢりに味方の将士も彼のあとを慕って追いついて来たが、どれを見ても、傷を負っていない者はない有様だった。

「また岐れ路へ出た。この二条の道は、どっちへ向ったがよいか」

曹操の質問に、

「いずれも南郡へ通じていますが、道幅の広い大道のほうは五十里以上も遠道になります」

と、地理にくわしい者が答えた。

曹操は聞くと、うなずいて、山の上へ部下を走らせた。部下は立ち帰ってきてから復命した。

「山路のほうをうかがってみますと、彼方の峠や谷間の諸所から、ほのかに、人煙がたち昇っております。必定、敵の伏兵がおるに違いございません」

「そうか」と、曹操は、眉根をきっと落着けて、

「しからば、山路を経て行こう。者ども、山越えしてすすめ」と、先手の兵へ下知した。

諸大将は驚きかつ怪しんで、

「山路の嶮を擁して、みすみす伏兵が待つを知りながら、この疲れた兵と御身をひっさげて、山越えなさんとは、如何なるご意志によるものですか」と、駒を抑えて質した。

曹操は、苦笑を示して、

「我れ聞く。この華容道とは、近辺に隠れなき難所だということを。――それ故に、わざと、山越えを選ぶのだ」

「敵の火の手をご覧ありながら、しかもその嶮へ向われようとは、あまりな物好きではありませんか」