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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

と、いった。

それまでの関羽は、さながら天魔の眷族を率いる阿修羅王のようだったが、はッと、偃月刀を後ろに引いて、駒の手綱を締めると、

「おう、丞相か」と、馬上に慇懃、礼をして、

「――まことに、思いがけない所で会うものかな。本来、久闊の情も叙ぶべきなれど、主君玄徳の命をうけて、今日、これにて丞相を待ちうけたる関羽は、私の関羽にあらず。――聞く、英雄の死は天地も哭くと。――いざ、いざ、いさぎよくそれがしにお首を授けたまえ」と、改めていった。

曹操は、歯を噛み合わせて、複雑な微笑をたたえながら云った。

「やよ、関羽。――英雄も時に悲敗を喫すれば惨たる姿じゃ。いま、われ戦いに敗れて、この山嶮、この雪中に、わずかな負傷のみを率いて、まったく進退ここにきわまる。一死は惜しまねど、英雄の業、なおこれに思い止るは無念至極。――もしご辺にして記憶あらば、むかしの一言を思い起し、予の危難を見のがしてくれよ」

「あいや、おことば、ご卑怯に存ずる。いかにも、むかし許都に在りし日、丞相のご恩を厚くこうむりはしたものの、従って、白馬の戦いに、いささか献身の報恩をなし、丞相の危急を救うてそれに酬う。