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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

明日のこともまだ勝っていない。いわんや全面的な勝敗はまだまだ先が知れん。およそ将たるものは、一勝一敗にいちいち喜憂したりするものではない。こよいはことに夜廻りをきびしくし、すべて、物具を解かず、昼夜四交代の制をそのまま、かりそめにも防備の気をゆるませぬように励まれよ」

すると果たしてその夜の深更に至って、妙に城中がざわめき出したと思うと、

「謀叛人があるぞっ」

「裏切者だ、裏切者だ」と、いう声が聞え出した。

張遼には、狼狽はなかった。すぐ寝所から出て城中を見廻った。もうもうと何か煙っている。諸所にぼうと赤い火光も見える。

「おう、将軍ですか」

楽進がそこへ駈けつけて来た。眼色を変えて、次にいった。

「城中に謀叛人が起ったようです。軽々しく外へお出にならんほうがよろしい」

「楽進か。何をあわてているのだ大丈夫、あわてるな」

「でも、あの喊声、あの火の手、由々しき騒動です」

「いやいや、わしは最初から眼を醒ましていたからよく聞いていた。裏切者と呶鳴る声も、出火だ、謀叛人だと告げ廻っている声も、ふた色ぐらいな声でしかない。おそらく、一両人の者が城中を攪乱するためにやった仕事だろう。