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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

「お別れして、ひとり呉に残っていたとて、なんの楽しみがありましょう。良人の側にさえいるなら、炎の裡、水の中、どこにでも生き甲斐があると信じます」

玄徳は嬉しさに涙を催した。彼はまたひそかに趙雲を人なき所へよんで、妻の真情を語り、また策をささやいて、

「元日の朝、人目に立たぬよう、長江の岸へ出て待っておれ」と、打合わせた。

趙雲は、念を押して、

「昔日の事をお忘れなく。必ずとも、孔明の計と齟齬遊ばさぬように」といって去った。

明くれば、建安十五年となる。その元旦は、まだ暁闇深く、朝の月を残していたが、東天の雲には早、旭日の光がさし昇りかけていた。

吉例通り、呉宮の正殿には、除夜の万燈がともされたまま、堂には文武の百官がいならび、呉侯孫権に拝賀をなし、万歳を唱え、それから日の出とともに、酒を賜わることになっている。

折もよし、人目は少ない。

玄徳は夫人呉氏とともに、母公の宮房をそっと訪うて、

「では、これから江の畔へ行って、先祖の祀りをして参ります」と告げた。

玄徳の父母祖先の墳墓は、すべて郡にあるので、母公は、婿の孝心を嘉し、それに従うのはまた、妻の道であると、機嫌よく夫婦を出してやった。