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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

妻子愛妾の私情にもひかれているに違いありません」

そのうち楡橋門へかかった。仰ぐと、驚くべき決意を示した人間がひとり宙にぶら下がっている。さきに下僕が泣き狂って訴えていた王累だ。その王累にちがいない。

右手に剣を持ち左の手には諫めの文をつかんでいる。縄に吊られて、両足を天にし、首を地に垂れて、睨んでいた。

驚いて、車が停まると、王累はくわっと口を開いていった。

「わが君、お待ち下さい」

そして、諫言の文を、哭くが如く、訴うるが如く、また怒るが如く読みだした。もしお聞き入れなければ、この剣を以て、自らこの縄を切り、地に頭を砕いて死なんと怒鳴った。

劉璋は、さっき張松から、卑怯な家臣がみな自分を脅迫するのだと聞いていたので、

「だまれっ。汝らのさしずはうけん」

と、一喝すると、王累は、

「惜しい哉、蜀や!」

と一声叫んで、右手の剣を宙に振り、自ら縄を切って、地上の車の前に脳骨を打砕いてしまった。

二

扈従の人数三万、金銀兵糧を積んだ車千余輛、ついに成都を距ること三百六十里、城まで迎えに出た。

一方の玄徳は、みちみち沿道の官民のさかんな歓迎をうけながら、すでに百里の近くまで来ていた。