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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

わけても、ふだん黙々として、だれよりも堪忍のつよそうだった勘太は、事ここにいたると、たれよりも兇暴な生命知らずの本質をあらわし、あいてのものを奪って、またたくまに四、五人の人命は、無造作に手にかけていた。

「勘太、勘太っ。そう殺すな。斬りころしてはならん。みね打ちをくらわせい」

気がついて、介三郎はそう呶鳴っていた。しかしその介三郎とて、投げても、踏みつぶしても、かわるがわるおめきかかるうじ虫勢には、ほとほと防禦の手もつきて、いまは腰なる一刀を抜きはらっていた。

「みね打ちで、みね打ちで」

自分にもいい、勘太にも注意したのである。けれど、われ知らず突く手も出るし、返す切ッさきに当る者もあるので、時折、刀のさきからぴゅっと鮮血がとんだ。

勝敗はすぐ決したといっていい短時間のうちに終った。わっと、怯みだすと、うじ虫勢は恥も意地もなく先を争った。

逃げるを追って、職人たちは、ここぞとばかり、丸太でなぐる、足を払う、金づちで叩き伏せる、天秤棒でどやしつける。ほとんど半数はあなたこなたにおいて足腰も立たない程度にのしてしまった。

そのあと……

ほっと大息を肩でついたまま、みなしばらくは、茫然と、各※(二の字点、1-2-22)が各※(二の字点、1-2-22)のいるところに立っていた。