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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
五
その信念と情熱をこめて、
「小楠公の仁慈は、もし小楠公のなした戦いが、ただの武家と武家の権力争いや、領地のうばいあいの如き合戦だったら、あの大慈悲心はわきあがって来なかったにちがいない。――自分の亡父からうけついだ戦いは、皇天皇土の御為であって、それ以外の私心はない。――そう徹していたところに、自然と、あの寛やかな大愛が持てたのだと、わしは思う」
と、いい足した。
そして、更に、
「大義とはここだ。皇軍の真ごころは大慈悲心だ。武勇はそれを仕果すために小義をころす大愛のつるぎなのだ。――聖なる戦いというわけはここにある。――それを小楠公の血のなかに遺したひとはいうまでもなく父の正成公。以て、正成公の信念もわかるし、七生報国の実もわかる。わかるだろう、みんなにも」
聞き入っている人々は、うなずくことすら忘れていた。ここだけでなく、小屋の中に残って、藁ぶとんにくるまっている者まで、みな声もなく涙をながしていた。
「……が、わしは思う。建武の聖戦のかげにも、女性の力のどんなに偉きかったかということだ。小楠公を生み育てたのも夫人なら、良人の正成公をして後顧の憂いなく忠戦させたのも夫人の内助だ。