轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
夜食の器を入れて返す。下はせまいから邪魔でならぬ。おい釣瓶を降ろせ」
空井戸とみえる。水も見えぬ、星も見えぬ。
われを忘れて、又四郎は、その中へ身を屈した。そして、洞然たる暗闇の底から面をなでて来る人間のにおいを嗅いだ。
「江橋っ」
「……?」
「林助え、林助か?」
「……だ、だれだ」
「わしだ。人見又四郎だ」
「えっ……?」
「そこは、空井戸か」
「そうだ」
「ずっと、そこにいたのか」
「夜も昼も」
「待て、いま、釣瓶を降ろしてやる。上がって来い」
いいながら、背を起そうとしたとたんであった。うしろへ這い寄っていた二人の番の者が、かれの足を掬った。又四郎の足は、宙の美男葛を蹴って、井戸のなかへ身を逆さまに堕ちて行った。
地の底には、一息のうめき声のほか、何も聞えなかったが、地上はそれからの一刻を、あわただしい人声や跫音に更けていた。
春雷
一
年毎の梅はことしも恙なく咲きみちている。日々是好日、西山荘の無事な門にも、きのう今日、人の足が繁くなった。
そのほとんどが、近村の農民であった。孫に手をひかれた老人もあれば、子を負いながら片手に馬を曳いて来る百姓の女房もある。そして、そのすべてのものが、かならず自製か自産の何物かを携えて、