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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
「は、は、は、は。あれもさだめし、生涯の迷惑じゃったろうに。よいよい、こんどは約束を果してつかわそうから、そう伝えて帰せ」
「お目通りをねがいたい容子で最前からひかえておりますが」
「わしもこれから城下まで出かけるところじゃ。供をして来いといえ。途々話そう」
「え、ご城下へ」
その時、土間すそに、小姓の江橋林助と近習の渡辺悦之進の二臣が、野良着を平常のものに着更えて、迎えに立っていた。
「わらじを」
ふたりへいいつけながら、老公もすぐ立った。
ここから水戸の城下までは五里ほどある。老公の健脚にしても半日ではすこし無理。そう考えて、二臣は馬を曳きだしておいた。
老公は、それを見て、
「ひとつ、ご苦労をたのむとするかな」
と、馬へ挨拶しながら乗った。
「お出まし。お出まし」
剣持与平は、広からぬ部屋部屋へ、外から知らせた。
梅の枝の影が映しているそこらの障子や杉戸があわただしく開いて、かれこれ十人以上もある山荘の召使が、みな藁草履をはいて、門のほとりに立ちならんだ。
お下婢もいる、小間使もいる、童子もいる、若侍もいる、老用人もいる。
老公は、百姓馬の背にまたがって、そこを通りながら、