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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

わしの志を援けて、共々にやらぬか)

と、だしぬけにそのはなしを、光圀から相談うけたとき、実に胆のつぶれるほど愕いたものであった。

が、どの程度かと、試みに、

(歴史も、おもしろいものですから、折あれば、お筆をとって、何か、書いてごらんになるもよろしいでしょう。いったい若殿には、国史のうちのどのへんの時代をもっともお好み遊ばしますか)

と、たずねてみた。

すると光圀は、

(いや、わしは学者でも史家でもないから、自身で筆を執ろうなどとは考えておらぬ。わしは、お身方のような、博学多識をあつめて、この大業に、扶翼協力させる親柱となるだけのものだ)

(では、よほど厖大なお考えの下に?)

(もちろんである。由来、わが国の歴史としては、中古以前のものに、古事記、日本紀などがあるが、中古以後にいたっては、北畠親房卿の撰せられた神皇正統記のほかにこれというものもない。――また、世につたわる史書の幾多にも、誤れるところもあり、著者の曲筆もまま多い。それらを正して、真の大国史を編修せんと思うのじゃ。――光圀一代で成らねば、わが水藩の業として、世々累代にわたっても)

卜幽も、了的も、唖然として聞いているだけだった。